The Long Goodbye

ハードボイルドの巨匠、レイモンド・チャンドラーが生み出した探偵フィリップ・マーロウ。
タフで優しく皮肉屋で、悪いヤツには滅法強いがイイ女にゃ弱い…そんなキャラクターが
世界中のミステリ・ファンに愛されつづけ今でもタフな探偵の代名詞になっています。
その作品のいくつかは映画化されてますが有名なのはハンフリー・ボガート主演の
「三つ数えろ」やロバート・ミッチャム主演の「さらば愛しき女よ」あたりでしょうか。

個人的に好きなのはエリオット・グールド主演の「長いお別れ(The Long Goodbye)」です。
彼の演じたマーロウは原作のそれよりも、お喋りでオトボけ、喧嘩も弱く、愚痴も多い・・
どちらかと言えば情けない男に近い感じで、むしろハードボイルドとはほど遠いキャラです。
そんな彼が親友との友情の為に、まったく稼ぎにもならない事件に巻き込まれ奮闘します。
衝撃のラストシーンは原作とは全く違った展開で此方もファンには好き嫌いの別れるところ。

本作は故・松田優作氏が最も愛した映画のひとつでもあり、その後、彼が演じる事となる
探偵「工藤俊作」が活躍するTVドラマ「探偵物語」のディテールやプロットなど実に多くの
部分が本作品からインスパイアされていたと言う事実は今でもあまり知られていません。

ドラマの中でも工藤ちゃんのアドリブでイマイチ意味不明な台詞があったりするんですが
原作小説や本作をよく観てみると実は意外なオマージュであった事に気づいたりします。
探偵物語というか松田優作ファンにもぜひお薦めの映画です。

ちなみに字幕版もいいですが、この作品に限っては是非吹き替え版をお薦めします。
現在では入手困難ですが、TV吹替音声版に収録されている故・森川公也氏による
マーロウの吹き替えは絶品です。吹替の名盤シリーズとしても復刻されています。